いい天気だ。
なのに俺の心は大雨…

雨、時々恋

付き合って一ヶ月の彼女と今日、久し振りにデートをした。今はやりのテーマパーク。
このくそ熱い太陽の下で今しがた彼女に振られたばかりである。
理由は‘他に好きな人ができたから。’だそうだ。
いっぱい貢いでバイト代もほぼ彼女につぎ込んだのに、こんな目にあうなんて…
高校2年生の夏休みはコレにて終了。あと半月をどうやって過ごそうか眩しい空をベンチで見上げながらボンヤリと考えていた。

「おい、お前。」

突然目の前に現れたのはウサギだ。ピンク色のフザケタ顔をしたデカイウサギ。
左手には小さい子に配る用の、色とりどりの風船が数個握られている。
「こんなトコにいると邪魔だ。」
ウサギのクセに生意気に俺に説教してきた。
「ココじゃあ熱射病なる。こっちへ来い。」
モゴモゴの手で腕を掴まれされるがままに歩かされる。
「おい、俺をどこにつれて行く来だよ!」
「ようやく喋ったな、青年。俺の休憩場だよ。」
ハタから見たらウサギに連行されている図だ。だって人目を現に引いてるし、小学生及び、幼稚園生には少しばかり指を指されてる。
園内の端っこの方に位置する休憩場。
ウサギが勢いよく扉を開け、堂々と中へ入っていった。
「おう!お疲れ!」
「ただいま!!次は藤さん、頑張って!」
「おうよ!」
ウサギと入れ替えに出て行ったのはキツネ。というか、30代の男性がキツネの着グルミを被って出て行った。
「まぁ、そこ座れ。」
ウサギは俺をパイプ椅子に座らせた。外と違ってこの中はクーラーが効いていて涼しい。
ボケ〜とウサギを見てると、ウサギは後ろ向きで着グルミをとった。
ウサギから出てきたのは汗まみれになった、青年。
「よぉ、青年。」
「……」
長いまつ毛と、大きな瞳が印象的だ。
「あ〜涼しい。ちょお待って。コレ全部脱ぐから。」
テキパキと着グルミを脱ぐ。脱ぐとやはり汗まみれの身体だった。上はタンクトップ一枚に、下は半ズボン。
「…。青年、なんか喋れよ。」
「な、何なんだアンタ!」
「そう。それでこそ一般人の反応。」
ウサギから人間に変身した人間は満足そうに頷いた。
「俺は平松若。若さまと呼んでくれ。アンタは?」
「村田ミチル。ってかなんでこんなトコに連れて来たんだ!」
そうだよ、何で見知らぬ人間に連行されなきゃなんないんだ。
「だってアンタ、悲しそうな顔してたじゃん。気を落としてたし。」
「へ?」
「俺って、こういう性格だから、そんな人ほっとけないの。つい声かけちゃってさ。
まぁこれも何かの縁。仲良くしようや。」
「はぁ…」
そんな満面の笑みで微笑まないでくれよ。アンタの事、信用しそうになっちゃう。


「そぉか、ミっちゃんは彼女に振られたのか。可哀想に。」
「はぁ。」
「大丈夫!ミっちゃんならすぐいい人できるって!」
「はぁ。」
「そんなわけでお姉さん、ケーキ追加!!」

何故か俺は今、若さまと喫茶店で一緒にお茶をしているのだ。この人、見かけによって甘いモノ大好きで甘ったるいケーキのおかわりをご注文。
「ミっちゃんは何歳なの?」
「俺?高2ですけど。若さま、は?」
「何歳と思う?」
「俺とタメ、か1〜2歳年下。」
まだ幼い顔をしていて、身長も160センチ後半ぐらいだから年下と言う印象があるのだろうか。
「よく言われる。正解は現役K大1年生の19歳。」
「え!本当ですか??」
その顔で年上なのにも驚いたがK大だなんてもっと驚きや!あんな頭のいいとこ受かるなんて…すげぇ。
「ひどいなぁその反応。ミっちゃんは見るからに年下だね。」
美味しそうにケーキを頬張り、幸せそうに笑う。本当に大学生なのか、この人。
「どう?心の大雨は少しでも晴れに近づいた?」
「え?」
「失恋!俺のお陰で少しは晴れたかって、訊いてるの。」
…そういえば俺、失恋した事なんて忘れてた。
この人のスペースに巻き込まれて、ついつい忘れちゃっていたのだ。あんなに悲しかったのに、今ではもうどうでもいい。
「じゃあ、俺はコレで。」
お会計の伝票を持って、若さまは立ち去ろうとした。あの中には俺のアイスコーヒーの金額だって入ってるんだよ。
「若さま。」
「なに?」
若さまは自分の財布から俺のコーヒー代まで出してくれた。
涼しかった喫茶店から、熱い外へ出ると急に汗がふき出してきた。若さまはどうやら駅へ向かってるご様子だ。
「コーヒー代、」
「いいよ、そんなの。」
「でも…!」
「じゃあ…」
若さまが急に背伸びをしてキスをして来た。気づくと長いまつ毛が少し揺れていた。
人前で、しかも公共の場。でもって男同士。
「ごちそうさま。」
「……!!」
驚きのあまり、キスされた唇を拭ってしまった。
「顔赤いね。」
この人、確信犯だ、絶対。
「じゃあね、バイバイ。」
人ごみに消えそうになる若さまの腕をとっさに掴んで、呼び止めてしまった。
今日突然出合ったこの人に、興味が沸いてしまった。もっと、知りたい。
「…なに。」
「あ、明日も会って!」
今の自分はきっと、子供じみた欲が彼にあるのだろう。少し優しくされただけで人に懐いてしまう。
でも俺は、若さまに懐いてしまった。
高校生なんて大学生にとってはガキも当然だろう。ガキでもいいから、俺と一緒にいてほしい。
「別にいいけど、戻れなくなるよ?」
「それでもいい。」
何を?とは聞かなかったけど、若さまとならいい。今日振られた彼女よりも、今まで付き合った女の子達よりも、若さまは魅力的に感じた。
「今日ケーキを食べた喫茶店で、今日出会った時間と同じ時間に明日会おう。」
「いいの!?」
「いいよ。俺もアンタのこと、気に入ったし。」
もう一回キスをされて、若さまは今度こそ人ごみの中に消えていった。
俺は最後まで、若さまのペースに狂いっぱなしであった。
早く、明日にならないかなぁ…。

 

            END


**あとがき**
ほぼ初めて下書きなしで仕上げた作品です!U○Jに行く途中、「遊園地の出会いってのもいいなぁ」と考えてました。
この一応受けの若さま、本当にミっちゃんと遊んであげるのでしょうか??謎です。
その内続編も書いてみたいと思います。。