君の楽譜、僕の音色W

 

今日は水穂さんの誕生日で、プレゼントを持って行く日である。

彼は今日で20歳になるそうだ。記念すべき、プレゼントが僕の曲で良いのかわからないけど、やるだけはやった。

誰かのため、に曲を作ったのは初めてなので、僕にとっても記念すべき日だ。

決まって会う場所は彼の家。防音設備が施されてるので、楽器を大音量で鳴らしても大丈夫なのだ。

だから、思う存分に楽器に触れる。そして今も…

「すごい!託生!これ本当に託生が作ったの?」

子供のように目を輝かせ、大きな拍手が部屋に響く。しまい水穂さんは立ち上がって喜び出してしまった。

「すいません、頑張って作ったんですけど、これが精一杯です。」

ヴァイオリンの構えを解き、水穂さんの方を振り向いた。

「どうして謝るの?僕が無理言ってお願いしたのに。」

ニコリと笑った水穂さんに、僕は目が離せなくなってしまった。

時々、思う事がある。

彼は音楽の女神・ミューズに取り付かれてるんじゃないかって…

「託生…ありがとう。大切にするね…。最高の贈り物だ…。」

プレゼントされた楽譜を胸に抱きしめ、恋人に囁くかのように、そう呟いた。

この人じたい、音楽の女神なんだ…

 

あ〜なんで英語の長文読解なんて宿題に出すのかな。これから見たいTVだってあったのに…。

英和辞書を片手に僕は宿題に悪戦苦闘。そんな中、ガチャ、っと扉が開き三洲が帰ってきた。片手に何かを持って…

「葉山、手紙が来てたぞ。」

「手紙?誰からだろ…。」

珍しい。三洲から手紙を受け取り、差出人を確認する。そこにはキレイな字で‘桜川水穂’とだけ書かれていた。

宿題をする手を止め、中身を取り出す。かすかに残る、残り香。

―――ふふ、驚いたでしょ。僕の友達にシドウに友達がいたから住所知ってたんだ。―――

手紙に綴られた、彼の筆跡に、声が宿る。あたかも、傍で話してるように、手紙の彼は話す。

「葉山、この頃変だぞ。いつもボーっとしてるぞ。ほとんどの事が眼中に入ってないぞ。」

―――この前、プレゼントしてくれた曲、級友に弾いて自慢したんだ。―――

「赤池のとこに崎が尋ねてくるぐらいだからな。」

三洲の声が頭に響かない。それほど僕は、この手紙を読むのに緊張していたんだ。

―――来週は友人宅に招かれてるので、一緒に過ごせないんだ。ごめん。でも、

再来週、僕は託生に話しておきたい事がある。必ず来てくれ…―――

読み終わっても、何度も何度も、繰り返し読んでしまう。

…どうしよう、このままこの人といたら、この人に惹かれてしまう。ギイとはまた違った、魅力が存在している。

頭の中で危険信号が点滅する。でも、コレを僕は消すことなんてできるのだろうか…

自信がないわけじゃないんだ。でも、本当にできるのかが、わからない。

「葉山?」

三洲が心配そうに僕の名前を呼んだ。

「…ごめん、考え事していた…。」

三洲は後ろから僕の肩に、優しく手を置いた。

「三洲くん…」

「何かあったら相談しろよ。俺も赤池もお前の見方だ。」

ストイックに微笑む、三洲の笑顔は、僕にとってはとても複雑だった。

探求しようとしないのが、三洲の優しさなんだ…

 

 

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