いちご牛乳
「上宮くんって、よくそんな甘いもの、飲めるね。」
昼休みの教室。
大野卯月は、目の前で頬月ながらパックジュースを飲んでいる友達・上宮真都にそう言った。
「甘くて美味しいじゃん。」
滅多に自分から話し掛けてこない大野に話し掛けられて、嬉しそうに大野の顔を見た。
大野が話題にしたのは、真都がよく飲む‘いちご牛乳’である。
ピンクのパッケージのイラスト。外見だけでも甘そうな印象をうけるソレ。
「姉ちゃんがよくこーゆーの飲んでて、俺もなんか飲むようになったんだ。あ、でも兄貴は飲まない。」
机に広げられてる弁当から、ふんわりとした美味しそうな卵焼きを摘み、口へ放りこんだ。
多忙な両親に代わって、よく真都の面倒をみてくれる姉の美都。
お弁当も美都が作ってくれたのだ。
「…ご飯にいちご牛乳って、気持ち悪い…」
「今日はたまたま。いつもはちゃんとしたお茶じゃん。」
ご飯にジュースというトッピングが目に入って仕方ない大野は、大きな眼鏡越しでついつい覗き込んでしまう。
見てるだけでも甘い味が口に広がる。
甘いものは嫌いでも好きでもなく、それに普段滅多にジュースを飲まない大野。
昔から母親があまりジュースを飲ませないようにしていたせいか、好んで飲もうとはしないのだ。
「大野、飲んでみるか?」
あまりにもジッっと見つめてくるので、勧めてはみる。
「え、いいよ。」
「まぁいーから、いーから♪」
半ば強引にストローを口に押し付けられ、大野はたどたどしく液体を吸い上げた。
真都は今気づいてしまった軽い間接キスに、思わず口を舐めてしまう。
大野の小さな可愛い唇がかすかに動くのに、目線が行ってしまう。
「んっ、甘い。」
大野はもういらないと言った様子で、ちょっと飲んでは真都にジュースを返した。
口に残る甘い香り。
久し振りに飲んでみたいちご牛乳は、それなりに美味しかった。
「なっ!なっ!別に不味くはないだろ!?」
照れ隠しにさっさとジュースをもらい受け、机の上に置く。
恥ずかしくて、飲みたいのに飲めない気持ち。
っと言っても、一人でドギマギしてるだけで当の大野は別段と気にしてない。
「不味くなかった。…けど、すっごく甘い。」
砂糖菓子のようにフワリとした笑みを浮かべ、大野は少しずれてしまった眼鏡をかけなおす。
真都は大野が飲んだ後のジュースに口をつけていいものか、少しチュウチョしてしまっている。
女の子同士がしょっちゅうペットボトル飲みまわししてるのだから、男の子同士でしてもいいじゃないか。
それに、もとはコレ、俺のだし。
そんな考えができ、変に意識を気づかれたら気まずくなりそうなので、ジュースに手を伸ばそうとした。
「真都、ジュースもらうぜ。」
風の如く、すばやく後ろから手を伸ばしてきたのは真都の親友、織原笙。
そしてアッと言う間に残りを全部飲み干してしまったのだ。
「………!!!」
さすがの真都でも、これには絶句。
「っはぁ!美味かった!」
満足そうに笑い、笙は口を手の甲で拭う。
「しょ…しょぅ〜…」
「何だ真都。全部飲んだのダメだった?ノド乾いてたんだよ。悪かったって。許せよ。」
まさか言えない。いえる訳がない。
大野との間接キスにドギマギしてたなんて…
自分にとってはかなりおいしいシュチュエーション。
ソレを親友に横取りされたのを恨めしく思ってしまう上宮真都。
13歳の初夏の出来事である。
END
**あとがき**
作者はいちご牛乳、飲めません。嫌いっていうか、飲めるんですけど、好んでは飲みません。
皆さん、ご飯にジュースって大丈夫な人ですか?
作者はどっちでも大丈夫ですね。
ってか、真都の事、責めれない自分です。ご飯のとき、牛乳なんだもん(爆)
では、ここまで読んでいただき、ありがとうございました♪