学校の怪談
「なぁ大野、知ってるか…?ここの学校の秘密。」
目を丸くさせ、大野卯月あ織原笙に目を釘付けにさせていた。
「階段の踊り場の鏡に…いてっ!」
笙はいきなり襲ってきて頭への痛みのせいで、せっかくに話の腰を折られてしまった。
そして、話の腰を折った張本人を恨めしそうに見上げた。
「笙!大野にへんな事吹き込むなよ!」
少し茶色がかった髪に、日本人離れした容貌の少年。
この少年こそ、笙の頭を叩いた張本人・上宮真都である。
「変って何だよ。学校の怪談について話してただけじゃんかよ。なぁ大野。」
「学校の怪談なんて、今時流行らない。」
真都は二人に目線を合わせ、近くにあったイスに座った。
まだキョトンとして、一言も言葉を発していない大野を見ては内心、『可愛い』と思ってしまう。
まだ自身でさえ気づいていない淡い恋心。
そのせいで無意識に大野に甘く、過保護になっているのに気づいてはいないのだ。
「大野は、怪談、知りたいよな〜」
笙は大野の承諾さえもらえばコッチのものと、猫なで声で大野にすりよった。
大野も大野で、何も考えなしで「うん」と言ってしまい、真都も仕方なくそんな二人に付き合うハメになる。
今となってはお決まりのパターンと化していた。
気を取り直して笙は、昔姉に教えてもらった話をそれなりの雰囲気の声を出しては、喋る。
「夜中の二時に階段の踊り場の鏡の前に立つと、現実とは正反対に世界に連れ込まれるんだって。
それを数年前にした子がおって…」
真都は『なんで夜中の二時に学校なんて行く必要があるんだよ』と考えてしまうけど、ここはあえて口を挟まない事にしている。
挟んだら挟んだで、後々笙が煩くなるから。
それに‘学校の怪談’は、相場は7つと決まっているのに、話してみたら12個はあった。
真都は呆れながらも聞いてはいるが、大野は反対に興味津津な様子。
だから彼は、笙のかっこうの獲物なのだ。
真都はそれを知ってながら見てるだけ…
笙も本気で大野の嫌がることはしない。コレは真都も承知。
「…どうだ、大野…怖かったか…?」
大野の反応がついつい面白くて、笙は少し興奮したように顔を近づける。
「こ、怖くないよ、それぐらい!」
声を少し震わせては、両手で拳を握り締めている。
目を何度もパチパチさせては、笙から視線を反らしているその姿は、さっき言った言葉を裏切っていた。
そんな大野を見て、真都はボォ〜と見入ってしまう。
するとさっきまで怖がっていた大野が、思い出したように顔を二人に戻し、話し出した。
「あ、僕ね、一つ、不思議な体験したことあるんだ。聞いてくれる?」
待ってました!と言わんばかりに笙はそれに食いつき、真都も何となく聞いてみようと気はした。
一生懸命喋るその姿は、まだ幼さを残し、自然と二人の母性本能をくすぐる。
「この前、家に帰ったあとに、宿題を忘れた事に気づいたんだ。それで、学校まで取りに戻ったの。
…えっと、夜の八時ぐらいかな。」
「ってお前、一人で来たのかよ。」
「う、うん…」
「俺でも誘えばよかったのに。大丈夫だったか?」
「大丈夫だよ。それぐらい、一人で来れるよ。でね、宿題をとって、帰る時にフと運動場を見たの。」
意外にも、この話を聞き入ってしまい、真都と笙は首を縦に動かすだけ。
「すると、隅っこに植えてある桜の木二本が、白く光って花びらを散らしていたんだ。今って桜の季節と違うでしょ?
その桜の木の周りには、桃色に光る発行物体が二つ飛んでいて、僕、怖くなって逃げ出しちゃった。」
大野は喋り終えると、ソレを思い出してか寒気が身体をよぎった。
正直、笙が話してくれた怪談話よりも怖いし、信憑性があると真都は思った。
「それ以来、夜の学校に一人で来れなくなっちゃった。」
可愛らしく笑った大野に目が離せなくなったのは、もちろん真都である。
「今度からは俺誘えよ。一人は怖くても、二人なら怖くないかもだろ?」
「…うん。」
笙はそんな二人にはあと一つ、話し忘れた怪談があったのを思い出した。
大野が言ったあの桜の木。
あれはこの学校ができる頃に植えられた木である。その桜の木はある大地主の家から運び出されたものであった。
大地主には娘がおり、娘は使用人の男と恋に落ちた。
でも身分違いで大反対をされ、二人してあの桜の木の前で命を絶った。
それ以来、夜になると二人は人の目を盗んでは話をすると言う。
あくまでも、‘うわさ’であるが。
ま、こんな怪談も悪くはないな、と笙は思った。
しかし、この事は二人、特に大野には内緒だな…と、運動場の隅に立ってる二本の桜の木を優しい眼差しで見ていたのだ。
END
**あとがき**
じ、実は、こういうテの話、大好きです…!怪談ブームは鯉が小学生の頃だったと思います。
当時は本を読み漁りましたね。色んな怪談の知識を集めました。
それは少しではありますが、今でも健在。
怪談話と同様、好きなのが「童謡に隠された隠語」です。ネットで調べまくります。
皆さんもやって見てください♪なかなか面白いですよ!!