早弁

 

 

「あ〜お腹すいた!!」

一時間目がやっとこさ終わり、俺は大きく背伸びをした。

月曜日は初っ端から苦手分野の数学なのでで、体力の消耗はいつもより激しい。

俺ってマジ、理数は苦手だよなぁ。

理数の強い味方・親友の笙をチラっと見ると、今日やったところの宿題をサッサとしていた。

「おい、笙!そんなの家ですればいいだろぉ!」

「…何だ真都か。今やっとけば家で楽できるだろ。」

「でもよ〜〜」

笙の席の前の奴がちょうど、トイレに立ってるみたいだからストン…と腰をかけた。

「あ〜マジ腹減った…」

今日はいつもより少し遅く起きてしまい、たいして朝食をとっていない。

姉の深都も仕事で今日は朝早く出勤してしまい、起してくれる人が…いなかったのも一つの要因かな。

俺ってば、まだ一人で朝起きられないんだよ。本当、いい加減にしないと。

いつの間にか目覚まし時計を止めちゃってる始末。

「お前、今日はなんか食い意地張ってるな。いつもはそんな事、言わないのに。」

「ん〜〜まぁな。」

「斜め前を見てみたら?いいモノが見れるよ。」

「ん??」

笙は教科書とノートを直し、俺はすぐさま振り向いた。

目にとまるのは、大野の小さな後姿である。

そして、その手に持っているものは…オニギリとペットボトルのお茶。

「少し、もらってきたらいいじゃんか。」

笙はそう提案をしてくれたが、俺も見た瞬間からその気満々である。

「ちょっと行ってくる!」

 

後から覗き込んだ大野は、手作りっぽいオニギリを片手に、次の授業の予習をしている所だった。

俺は気づかれないように背後に近づき、頬を軽く引っ張った。

「……!!」

瞬時に大野に緊張が走ったのがわかり、思わず笑いが零れてしまう。

「はは、ごめんごめん!」

「…何だ、上宮君か…どしたの?」

前、深都に前髪を切ってもらったけど、少し伸びたなぁ。

眼鏡越しのその可愛らしい笑顔は、今や俺だけの特権となった。

…本当、可愛いなぁ。

「あのさ、少しお腹すいたから、ちょっと、そのオニギリが欲しいなぁ〜なんて。」

親指と人差し指で‘ちょっと’を作ると、大野は戸惑いながら返事をくれた。

「別にいいけど…食べかけしかないよ?」

「いいの!?ヤッリィvv」

「あ、全部食べてもいいよ。僕、さっき一個食べちゃったから…」

「マジで!さんきゅーーー!!」

半分ぐらい残ってるオニギリ。

大きさからして、大野が自分で作ったみたいだ。

少しイビツで、三角とは言いがたいけど食欲をそそるのには十分である。

「お茶もどうぞ。」

ペットボトルを差し出され、一口飲む。

結構、喉渇いてたからマジ助かる。

こいつ、絶対いいお母さんになれるよ…。

「ごちそうさま。美味しかったぜ。」

「本当?僕が作ってるからあんまり形がよくないから、少し恥ずかしいんだよね。」

「お前、いい奥さんになれるぜ、きっと。」

「…男だから奥さんは無理だけど…」

クスクスと笑う大野の俺もつられた。

あんまり表情を表に出さないから、周りから遠巻きにされているけれど、大野は笑うとこんなに可愛いんだぜ。

小動物を思わせるのでついつい頭を‘ポンポン’と撫ぜてしまう…。

「ちょ、上宮君…」

照れてる顔も可愛い!!

「ん〜あ、チャイムが鳴った…じゃな大野。また遊びに来るよ。」

「あ、バイバイ。」

お腹の虫はおさまった。大野の手作りだと言うだけで何であんなに美味しく感じられるのだろうか。

今度は俺も、間食用のおにぎり持ってこようと思った。

 

 

               END