マネージャー

 

高後学園弓道部マネージャーは、代々美人という事で密かに有名である。
だから部員達は、部活をサボらずに一生懸命参加していた。
それは今も昔も同じ事。
専ら、参加の理由は美人マネージャーに会うことだが、それなりに腕も上達はしてくる。
なので部員にとっては一石二鳥なのだ。

「みんな、お疲れ。休憩しなよ。ハイ、おしぼり。ちゃんと冷やしといたから、気持ちいいよ。」
7月に入るとセミもいつの間にか鳴きだしており、空には小さいながらも立派な入道雲ができあがっていた。
今年の4月に高等部へと進学したあずさは、先輩マネージャーと一緒に部員のために記録を採ったり、ジュースの買出しをしたりと、
ようするに雑用をしていた。
弓道部にはマネージャーは二人いる。
一人目は高校2年生の品川良一。
クリクリお目々が可愛くて、いつも笑顔の可愛い先輩。人を扱うの上手で、少々乙女チックなところがある。
二人目は都津川あずさ。少しお嬢様気質。気を許した相手には甘えてくる。
そんな二人は弓道部員の憩いの場となっているのだ。

「…へぇ〜え。都津川、入学時と違って美人に育ったな。」
感心したように頷いたのは高校3年生の息吹時生。
弓道着はいやに似合っているのが、いやにサマになっている。
「先輩、何見てんすか。」
それにすぐさま反応したのは高校1年生の川澄岬。
時生と岬は気もよく合い、かなり仲のいい友人同士。
というか、類友であった。
勿論、恋愛感情なんてものはなく、友人以上親友未満の関係と言える。
「いや、都津川、蕾から大輪の花を咲かせたよなぁ…と。おじちゃん、感激。」
「…先輩、おじちゃんって…」
時生は、子が育ったのに感激した親のように目元を弓道着の裾でおさえ、泣くふりをした。
「息吹先輩、何やってんの。こっち来て早く休憩しなよ。岬もこっちおいでー!」
なかなか来ない二人に良一は、大声で呼びかけた。
男子にしては長い髪を横二つくくりにし、良一は一段落したように壁にもたれ座り込んだ。
昨日、なかなか時生に離してもらえなく、少し寝不足なのであった。
「良先輩、お疲れさまです。」
「あ、あずさ。あずさもお疲れです。まぁ座って俺らも休憩しようや。」
歳往相に見えない笑顔で良一は飲んでいたお茶をあずさに渡した。
お茶はキンキンに冷え切っていて、夏には嬉しい温度。
「先輩って、俺が入ってくるまで一人でマネジしてたんですか?」
唐突の質問に良一は「ん?」と思うけれど、懐かしそうに口を開いてくれた。
「ここは中学も弓道部あるけど、高校と合同と違うしね。
俺は高校から。時生が俺の事好きって告白してくれて、賭けをしたんだ。
3メートル離れたとこから台の上に置いてある、スイカに矢を命中させたら付き合ってあげるって。それが中3.
すると2発目で命中させて最初は名ばかりの恋人。でも、人間って不思議なもんで日が経つにつれて相手の事気になり出すもんだ。
もっと時生の事知りたいって思って、そしたら好きになってた。で、マネージャー。
弓道部って、部員には恵まれるけど、マネージャーには恵まれないってジンクスがあんの。だから結構重宝されたなぁ。
特に時生にはね。練習ほっぽいて俺の手伝いばっかして、部長によく怒られてた。」
もう二年前のことか…と良一は時の流れを感じてしまう。
部活の間はケジメをつけるために‘息吹先輩’と呼んでおり、それ以外は‘時生’と呼んでいる。
「あずさはどうなの?」
「…なんていうか、いつの間にか入部…」
そう、あずさは帰宅部の予定だった。
なのにいつの間にか岬と一緒に入部していたのだ。

「俺は時生の事、大好きだよ。この夏が終わって、時生が引退しても、俺はマネジ続けるし時生が学園を去っても、マネジを続ける。
だって時生がこの学園で俺と一緒に過ごしてくれた空間を、そう簡単に捨てれるわけないしね。」
はっきりと自分の気持ちを言葉にし、まっすぐな瞳の先には恋人の姿。
「あずさは?」
不意に質問を受け、あずさは答えにつまった。
でも、答えはすぐに見つかるほどに決まっていたのである。
「俺も、岬と一緒にココを卒業します。学園も、弓道部も…」
自分の気持ちを、思いもよらなかった形で再確認し、あずさは何とも言えない気持ちになる。
「そうそう、コレ、時生には内緒。すぐに調子乗るから。
良一は立ち上がると、部員と雑談している時生へと駆け寄った。
それと入れ替わりにやってきたのは岬。
「何話してたんだよ、良一先輩と。」
「…別に…」
内緒、と約束をしなくてもあずさは言わない。
人の大切にしてる気持ちを、それが相手の恋人であろうと喋ろうとは思わない。
「え〜何でだよ〜。」
「いいの。マネージャーだけの秘密。」
「なんかやらしぃ〜。」
「秘密ったら、ひ・み・つ!!」
俺だって、岬のこと好きさよ。
あずさは、そう言う代わりに岬の手に軽く触れたのだった。

 

               END

 

**あとがき**
す、すいません…マネージャーの経験ないんで(勿論、弓道部も)想像で書いてます…。
このシリーズは、鯉の中で大きくなってるので、すっごく愛着があります。
だから、この二人は書いてて楽しいvv
それにしても、なんか新キャラっぽいの作るの、好きだな…俺。
息吹時生先輩には兄として息吹湊がおります。
シリーズのどこかにいるので、ヒマなら探してみてくださいv