デートの途中。


「イインチョーは。どっちがいいと思う?」

一週間の楽しみの日曜日。

今日は、同室の紺野と一緒に俺は街まで来ていた。

何故なら、今週の木曜日、2月22日は俺の恋人・岬の誕生日だからである。

岬には内緒で二人して誕生日プレゼントを買いに来ているのだ。

「あずさ、学校以外ではその呼び方止めろって言ってるでしょ。」

「あ、ごめんごめん。いつものクセでさ。で、和己はどっちがいいと思う?」

「んーー。」

俺ら二人してにらめっこしている相手は、俺の腰くらいまでの高さがあるイルカの抱き枕。

触ると感触が良くて、肌に吸い付いてきそう。

思わず抱きしめて放したくない!と思う逸品だ。

ソレは空色の水玉模様のやつと、桃色のボーダーラインの二種類あって、俺はどっちを買おうか今悩み中なのである。

紺野も首を傾げては真剣に悩む。

紺野とはずっと同室で、教室でも仲がいいから何かとプライベートな相談はしている。

こんな相談だって、かれこれもう3年目かもしんない。

岬はあんまり色の好き嫌いがない。だから、ピンクを買っても絶対に喜ぶと思うんだけどなぁ。

そして悩む事数分。

「…コッチに決めた!」

結局、買ったのは空色の水玉模様の方であった。

 

「和己ありがと。付き合ってくれて。」

雪もだいぶ降らなくなってしまったけど、吐く息はまだ白い。

昔は冬になると何で息が白くなるのか、不思議に思ってたもんだ。

「何言ってんの。全然いいよ。俺もプレゼント買いに行こうって思ってたし。」

「ホント?じゃよかった。どっかお店入ろっか。体冷えてるし、温かいもの飲もう。」

「賛成!!」

俺らが機嫌良く話してる時に、その不運は近づいて来た。

その瞬間、和己のバッグが後ろから追い抜いた男にひったくられてしまったのである。

男は用意周到か、それとも手馴れてるのか、顔にはサングラスをかけて黒いニット帽をしていた。

「あっ」

「おい!待てよっ!!」

俺は咄嗟に荷物を和己に渡し、男を追いかけた。

が、男はローラースケートを履いていて、いくら足に自信のある俺でも敵いっこなさそうなのは明白。

和己がすぐ警察に連絡してればいいんだけど、生憎、あいつは携帯電話は持ってない。

「この泥棒がっ!!」

 

ちょうど俺が背丈の長い布を持ってる二人組の青年を通り過ぎた時。

「…達也。」

「やってみる。」

達也、と呼ばれた青年は急いで、でも冷静に的確にその布を取り外した。

その中から出てきたのは弓矢である。

「人も少ないし、矢は俺が改造してるから心配ない。」

「改造なんて先生に知れたらお小言じゃすまないわな。」

「無駄口叩くな。狙うはあのニット帽の男。目指すは後頭部。」

「りょーかい。」

弓を構えて弦を引き、狙いを定めて動く的を捕らえた。

右手を離すと、弓は勢いよく飛び出しまるで馬のように風を駆け、あずさを追い抜き男の背中に命中。

「ぐおっっ!!!」

鈍い音がして男は地面に派手に転倒した。

 

「…え?」

俺の横をナニかが走ったと思った矢先、和己のバッグを盗んだ男は地面に倒れていた。

「…なんだ、コレ……」

俺は疑問に思い、男の背中に命中したモノを凝視してみると、ソレは俺も良くしってる矢であった。

「ま、達也、一応成功だな。」

「だな。」

後から二人の青年が嬉しそうに俺に近づいて来ては、放った矢をすばやく回収してしまった。

人当たりが良さそうなこの二人の青年。

俺や岬とあんまり年齢も変わらなさそうなのに、一体何者なんだ?

「……あの……」

「はい、カバン。警察にはもう連絡してあるから。

お友達に盗られないようにって言っといてね。行こ、達也。」

「OK、友一。じゃあね、高後のマネさん。」

「え!あ、あの!!」

何で俺の事、知ってるんだ??って聞こうとしたのに、彼らはサッサと消えてしまった。

「…でも、どこかで見たことがある……」

特にあの、弓を放った達也という人は。

「お礼もまだ、してないのに…」

「あ、あずさ〜〜!」

「和己、遅い。」

「ごめん〜ありがと〜!!」

嬉しさと心細さのせいか、和己は俺に抱きついた。

俺はそんな和己をヨソにして心の中はあの二人のことでいっぱいだった。

達也…に友一……か。

笑顔のまま、まさしく放った弓矢のように去ってしまって行った人達。

それから数ヶ月して、俺は再び彼らの事を知る事になる。

でもそれは、また別の話。

 

           END

 

**おまけ**

「おい友一、もう改造はしちゃダメだぞ。」
「いいっていいって先生にバレなきゃ。」
「3回ほどバレテ、俺も説教の道連れにしたじゃねーか。」
「まぁまぁ。今日はその改造弓矢のお陰で、いいもの見れたじゃねーか。」
「ん〜まぁね。まさか高後学園の弓道部マネとお会いできるとは。」
「一緒にいたあの眼鏡、川澄とは違うだろ?」
「全然違う。」
「そのうち、俺らのレベルまであいつは登ってくるよ。今はチェックのまま。」
「だな。それにしてもあのマネって結構可愛いよな。今度メアド交換…」
「お好きにどうぞ。俺はなーーんにも思いませんから。」
「ウソだって。可愛いけど、俺の好みからは少し外れてるだろ。」
「少し??」
「そ、少し。あのこ、少しだけ友一に似てるからなー。ま、俺の好みは友一だけどさ。」
「…一生言ってろ。」

 

**あとがき**
矢なんか改造できるのか?と思いながら打ち込んでました、鯉です。
このお話、題名決めるのにものすごい苦労しました。
ま、なんとかこの題名に決まったんですけどね。
さてさて、この新キャラの達也&友一。
彼らはまた別の話で出てきます。
っと言っても、弓道とはあんまり関係なく話しを作りますが(汗)
だって、大会の事とか、全然わかんないんだもん(涙)