少年女神U

 

「お邪魔します。」
あの時、どうしてあんな事を言ってしまったのか、自分で自分がわからない。
「真都、お帰り。お友達も来たのね…ってびしょ濡れじゃない。遊んで帰ってきたの?」
仕事で忙しい両親に代わり、俺を育ててくれたのは11歳年上の姉・深都。
「まぁそんなとこ。風呂わいてる?」
美容師2年目で、そこそこ名前の売れた店で働いている。知り合いのツテでたまに芸能人の髪をセットしたりもしている。
「沸いてることはわいてるけど…」
「あ、えっと自己紹介もまだですいません。上宮君と同じクラスの大野卯月です。」
「こんにちわ。姉の深都です。」
フワリと笑って、肩まであるブラウンの髪が揺れた。
「おい真都、どーせ二人とも風呂入るんだろ?電気代浮くからいっきに入ってしまえよ。」
奥のリビングから声を出したのは7歳年上の兄・遊都。まだ大学生で、たまにしか家に帰ってこない。
一体どこで何をしてるんだか…
「わかってるよ。ってなわけで付いてきて。」
「う、うん。」
大野は風呂場までの短い距離をヒヨコのように俺のアトをついて来たのだった。

「お前って肌の色白いなぁ。」
「そう、かな…?そんなの気にしてないから…。」
「それに細い。ちゃんとメシ食べてんのか?成長期なんだから。」
大野は今、体をボディーソ―プであわ立てているところ。さすがに子供二人といっても風呂場は狭い。
先に俺が全てを終わらせて、次に大野…といった順番だ。
「身体も華奢だし、髪もキレイ。」
まさか、あの大野がここまでくるとは、予想すらしなかった。
「そんなん、言われたの初めて…。」
「眼鏡やめてコンタクトにしたら?」
「お金ないし…それに今のままでも不便と違うし。」
今までは伸びすぎた前髪と、大きな眼鏡のせいでわからなかったが、とても可愛い顔をしていた。
黒くゆれる大きな瞳に、きめ細かい素肌。桜色の唇は触れたら柔らかそうで。
ボ〜と見ていると、危うく下半身が反応しそうになった。
「やべっ。」
思わず、押さえてしまう。
「…ねぇ、洗い終わったから、そのぉ、一緒に入ってもいい?」
何も知らない大野は酷にもそう言った。俺の下半身がヤバイからって大野を入れないわけもなく、
「入れよ。寒いだろ?」
一人分のスペースを空けると、大野がチャポン、と入ってきた。入る時に見てしまった大野の胸。
小さな突起が可愛らしく尖っていて、変な衝動にかられた。
「ふぅ、温かいね。」
そんな俺を知らずに、少年体系がぬけていない笑顔で俺に笑いかけた。
頼むから、そう俺を刺激しないでくれ。小学校の時はしょっちゅう笙と風呂に入ったりしてたけど、こんな事は起こらなかったのに。
「俺、先に出るから好きな時に出て来いよ。」
「上宮君…?」
大野が喋るのを待たずして、湯船を出た。少し頭を冷やさなければ。
大野の裸を見て少しだとしても、興奮したなんて、俺って変だよ。


「あの〜やっぱりいいです。今のままで…」
「ダメよ。そのままじゃ。目が悪くなる一方よ。」
「……っ。」
「さ、始めましょ。動かないで。」
深都は大野の伸びきった前髪は目に悪いと言い、食事中に切ってあげると、申し出たのだ。
「眼鏡なんて今はいらないわ。真都、持ってて。」
強引にも眼鏡を奪い取り、俺に渡す。大野は俺に目で『助けて』って訴えてるんだけど、助けない。
深都の意見に賛成だし、それに…
されるがままの大野を見ること30分。彼は見間違えるような少年になった。
たかが髪を切っただけで…
「…何か落ち着かない…」
顔を隠すモノがなくなったせいか、印象が全く違う。予想以上に可愛い。
「ん、可愛いわ。ボーイッシュな女の子でもいけるわ!切ってよかったわね。」
深都は満足そうに大野を抱きしめた。
「わっ。」
「ん〜可愛い!!妹みたい!むさ苦しい弟二人より断然いいわ!柔らかい!」
俺も大野を抱きしめたいと思ったけど、そんな事はできるわけもなく…。
フと見た時計は八時を差そうとしていた。
「大野、八時だけど大丈夫?何なら泊まってく?」
「え!八時?ううん、家に帰る。弟が待ってるから…。」
少し大きめな俺のシャツを着て、大野は帰り支度を始めた。
…どうしてか、俺は大野を帰したくないなぁなんて思っていたのだ。


次の日学校へ着くと大野は自分の席で本を読んでいた。段々と人が集まり出す教室。
教室に入るやいなや、目がどうしても行ってしまうのはどうしてだろうか。
それは他の生徒も同じで、かなりの視線を集めていた。
昨日の学ランは雨でびしょ濡れになってしまったため、遊都が中3の時に着ていたものを貸した。
俺でさえまだデカイのだから、大野なんてもっとデカイ。足の裾はキレイに折られているが不安定。腕も同様。
ダボダボでまさしく、大野が制服に着られている状態。
これだけでも充分目を惹くのに、本来はその容貌。眼鏡越しでも多少はわかる。
「おっどろいたー。あの大野がココまで化けるとは。」
「だろ?俺も正直驚いた。ただ髪切っただけ。」
「眼鏡外すとどうだった?」
そりゃもう、美少女と言っても可笑しくはなかった。一緒に風呂に入って少し下半身が反応するほどにな。
しかし、大野はそんなクラスの視線に耐えられず、ついには教室を飛び出してしまった。
「おい、大野?チャイム…」
「追うぞ、真都。」
たどり着いた先は人が滅多に訪れない二階の踊り場。校舎から離れてるため、移動教室でたまに来るだけ。
そこに大野は体育座りをして顔を伏せていた。
「おい大野、どうしたんだよ。急に飛び出すからビックリしたじゃないか。」
「…上宮君、織原君…。」
小動物が心細そうな感じで俺らを見る。…こいつってウサギだよな、ウヅキなだけあって。
「皆が僕を必要以上に見るんだ。空気同様にほっといてくれない…。」
「それはお前が可愛いからだろ、大野。お前の素顔を初めて見て驚いてるだけだって。なぁ、真都。」
「そうだよ!」
どうしてこうも笙は本音を言えるのかが謎だ。
「…可愛くないよ、こんな顔。僕は嫌いだ…。」
「いいや、大野!お前絶対可愛い!俺が保障するから自信を持て。」
どうにかして大野を勇気付けたく、思わず手を握ってしまった。
「…上宮くん…」
俺と目を合わせてくれて、大野は顔が赤くなった。
「な、だから一緒に教室帰ろ?」

そういうと自信なさげだが、コクリと首を動かしたのだ。俺は人には大抵甘いが、大野の関しては砂糖菓子のように
甘い気がする。頬を赤らめて頷いた大野はとても可愛かったので、握っていた手を強く握ってしまった。
男を可愛いって思うのって、どこか可笑しい気がするけど俺の正直な気持ちである。
こいうい理由で、俺と笙は大野と次第に仲良くなっていくのである。

 

                                           END

 

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