こんなに君が好きなのに
「決めた!俺は海賊になる!」
椅子から勢い良く立ち上がり、至は拳を握った。
…いったい、これで何度目だろうか。この台詞・
「まーた始まった。イタルの夢宣言。」
「今度こそ本気だ!」
至は目を輝かせて、本気にしない優と雅のコンビを睨む。
さすがは双子の優と雅。至の言葉を軽くあしらうタイミングまでもが息ピッタリだ。
「ハル!俺と一緒についてくるよな!」
そんな二人を早々に諦め、俺の方を向いた。
「えーー。」
「ハル!俺とお前の仲だろ?入試の時、お約束のように消しゴムを忘れたお前に誰が手を差し伸べた?
紛れもない、この木崎至だ。」
そう、俺は入学試験の時、あろうことか消しゴムを忘れ、本気で困った。
焦った俺は決死の覚悟で前の席に座っていた生徒―それが至―に頼んだんだ。
『すいません、消しゴム忘れちゃったので、半分くれませんか?』
『あ?』
嫌そうな声だったのを、俺は未だに忘れられない。
「で、イタルは今までに何にハマッタっけ?トレジャーハンターに錬金術師。エクソシストに侍。どれも2週間は続いた試しがない。」
艶やかな唇を動かし、ジュースを口に咥えながら雅は言った。
「そうそう。今までにいっぱいはまってすぐにポイ捨て。俺らもその内ポイ捨てされるかもね。」
次に言ったのは優。上品な身のこなしには隙がない。優は一見、ひ弱そうだがこう見えても剣道部の主力選手である。
「今度こそ、本気だ!本気の本気だ!」
ハイ、二度目の台詞。
「せいぜい頑張って海賊になって下さい。ハルも途中でしんどくなったらすぐに俺のとこに戻って来いよ。
行くぞ、優。」
無責任なお二人さんはチャイムが鳴ると同時に、自分のクラスへと帰っていった。
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「じゃあまず。この漫画によると船長、剣士、コック、航海士、医者、学者がいる。もっちろん、俺が船長。
ハルは航海士な。」
俺は航海術なんて持ってないよ。
「優は剣士。ああ見えても剣道部だし。で、雅がコック。あ、なんとなくだけど。あとはー医者と学者を決めようぜ。」
医者と学者ってあんた…おままごとかよ。
「なぁ何で喋んないんだよ?」
今は喋れないんです。
「おいっ!ハル!」
あ〜あ。来ちゃったよ、大御所様が。
「それは先生が教えてやる。今は数学の小テスト中だからだ!」
至は文字通り、顔面蒼白になり、用紙は真っ白。こりゃ追試決定だな。