こんなに君が好きなのに・2
放課後になり、至に引っ張られて図書館へ資料集めに行った。でも‘海賊’なんてジャンルはたいていなく、
至の部屋にある例の漫画を参考資料にした。
「あーもう。ハルのせいで小テスト0点じゃないか。どう責任とってくれるんだ。」
「知らないね。勝手に喋って机までくっつけて来たのは至だろ?至が悪い。」
至は同室者がいないのをいい事に、モノを散らかしまくっている。
「あー漫画の世界はいいなぁ。俺も漫画の世界の主人公になりたい。そして素敵な冒険がしたい!」
漫画を読みながらのその文句は、かなりの説得力がある。
「なんか面白いこと起きないかなー。生活に刺激が欲しいー!」
エネルギーが余りまくっているせいか、手足をバタバタと動き出した。
「あ、でも今の世界のほうがいいな。」
ガバッとベッドから身を乗り出し、俺の横にくっつく。俺は平常心を装っているが内心は心臓バクバク。
「何でか知りたい?」
「えー知りたい。」
ここで「別に。」「いいや。」なんて言うとすぐに怒るからなぁ。
「だってハルと会えなくなったら、イやじゃん。」
大好きな至は、こんな風にたまに思わせぶりな発言や行動をする。俺の気持ちを知っての事か。
これにかなり悩まされているのだ。
「ハルも俺と会えなくなんの、イやだろ?」
ほらまた。俺に理性と忍耐がなかったら今頃押し倒されているぞ。
「どっちでもいいよ。」
「もう、テレちゃって。」
至は満足そうな顔を浮かべ、俺の肩へと手を伸ばした。
「だってハル、顔真っ赤…」
「…うるさい。」
今、至が俺に抱きついているのでさえ、ドキドキしてたまらない。そんな綺麗な瞳で俺を見ないでくれ。
「あ、ハル。夕食の時間だ。優と雅待たせてる。」
ピョンっと何事もなかったようにベッドから降りた。
「あ、コックは雅やめて食堂のおばちゃん、誘おうか。」
「――――え?」
冗談とも言える声のトーン。しかし、何度も言うように至は‘本気’だ。
頼むから、他人に迷惑をかけるのだけはやめてくれ。
約2週間後。
「至、海賊は飽きたんだろ?」
「んー。」
…そう。いつも通り至は二週間で飽きたのだ。いつも突然ハマッて突然飽きる。ハマッている間はその事について徹底的に
調べるから知識は広くて深い。しかし知識は使わなければ忘れていく。が、至は我がクラスの雑学王と言っても過言ではない。
「ハル、帰ろうぜ。」
「ごめん。今日呼び出されてから先帰ってて。」
「え?何でだよ。追試は明日だろ?」
「俺は至と違って満点なの。別の用事。」
少し悲しそうな顔をした至は恨めしそうに教室をアトにした。
「ハルって普通のくせに普通と違う…」なんて意味のわからないセリフを言いながら。
「で、ハルは何の用事?」
キレイな笑みを浮かべ雅は俺をつついた。雅には隠し事が通用しない。すぐにウソとばれてしまのだ。
俺と同じくらいの身長の雅は、お互いの息がかかるほどに顔を近づけてきた。
「なんか靴箱に手紙が入ってて、4時にイチョウ並木で待ってます…って。」
ピラっと取り出した白い封筒。
「ふぅーん。まぁたいていは告白だな。」
手紙の内容を読む雅は冷静にそう喋った。
「え?俺男なのに??」
って人の事言えないが…
「今時珍しくない。お前ほどバカで超鈍感な奴の方が珍しいくらいだ。ハルじゃなくて俺にしといたら愉しませてあげるのに。」
意味深だ。雅が言うと冗談に聞こえない。雅は少し顔を伏せ、何かを考えた。
でも、次の瞬間には俺の目の前に雅の綺麗な顔があった…
「―――。」
数秒、という短い時間だった。なのにそれは数分にも思えた。
「どう?男とのキスって…」
悪びれもせず、艶っぽく、そう尋ねたのだった――