神様がいないとしても…1
いきなり、本当にいきなりだったんだ。たまたま遅くまで残ってた俺が職員室前を通ると、先生に美術室の鍵閉めを頼まれたから鍵を閉めて帰ろうとしたら……急に眠気が襲ってきて……
気づくと俺は、両手を縛られて目隠しをされていた。
「お願い…。今だけ、今だけでいいから津田だと思って……」
切羽詰った声と同時に、俺の下半身に温かいナニかが重なる。
…そう、俺はあろう事か、男に逆強姦されていたのだ。
あれから数日。あの犯人は音沙汰無く姿をくらました。
あの後、意識がちゃんと覚醒した時には情事の後も、俺の身支度もきちんと整えられていた。
…何だったんだ、一体?男の俺に、男が逆強姦し、それが頭と身体から離れない。
授業なんてそっちのけ。
わかってる事は唯一つ。犯人は津田を知ってる奴ってこと。
「なーおき、どぅしたの??」
「…津田……」
しかし、津田を知ってる奴なんて学校中じゃないか。
一人で悶々と考えているといつのまにか授業は終わっていた。
そこに可愛いらしくピョコンとやって来たのは学年のアイドルで、俺の思い人・津田悠里。
小さくて可愛い津田を見てるだけで俺の心は癒されるのだ。
「津田ぁ、お前は可愛いなぁー。」
「え、なになに??」
いきなりそんな事を言われて混乱する津田を無視し、俺は細身なその身体を引き寄せた。
「何かあった?」
男にしては細い腰に腕を回し、見上げると津田の笑顔。いつもは俺が見上げられる方だから、なんか新鮮。
「イやな事があったんだけど、今はいいや。」
「そうなんだ。可愛そうにね、よしよし。」
津田は幼い子にするように俺の頭を撫ぜた。ここは男子校だからか、こういうやり取りは別に不思議ではない。
俺は津田が好きなのは恋愛感情としてだけど、ソレも少なくは無い。
俺のクラスでも付き合ってる奴はいる。まぁ、もちろん内緒でだけどさ。
津田は俺に友達として接してくれるから、むやみに告白をして今の関係を壊したくはない。だから、今は我慢する。
「あっ、もう、抱きつくな。俺、これから…」
「津田、図書整理の時間だ。行こう。」
…せっかく良い雰囲気だったのに…
俺らに声をかけて来たのは津田と同じ図書委員の小笠原和月であった。黒髪・黒目と、津田には負けるが男のわりには顔は可愛い。
しかし、正直俺はコイツが苦手である。
あまり人とつるまなく、一人で居ることの方が多い小笠原は、クラスでも遠巻きに扱われている。
そのくせ意思表示ははっきりとしていて、またソレが正論を述べたりするもんだから扱いづらい。
話し掛けても必要最低限の返事しかなくて、常に無愛想。入学してもう一年半は経つけど、笑った顔なんて見たことがない。
「そうなの。今から図書整理。じゃ、直樹、行ってくるね。」
スルリと俺の腕から抜け出し、小笠原とは対照的な笑みを浮かべ津田は小走りで入り口で待つ小笠原まで駆け寄った。
津田といると、アノコトさえ忘れられる。それほどまで俺はアイツが好きなのだ…
と、浸っていると廊下から人の叫び声が聞こえてきた。
「!!?」
大きな音もし、クラスに残ってた連中共々、音のした方へ向かう。
見てみると、津田が会談の下で倒れていたのだ。
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