神様がいないとしても…2

 

 

 

 

 

 

津田は全治一ヶ月の入院が必要とされた。だから最低でも一ヶ月、学校には来られない。
その一ヶ月の間俺は、津田の代わりに図書の仕事を引き受ける事にしたのだ。
これも可愛い津田のためだ、相手がアノ小笠原だとしても我慢しよう。
図書の仕事は週に2回。火曜と金曜である。いつもその日になると津田はいなくなるので、日にちは覚えている。
ちゃんと覚えているので、昼休み友達と楽しくご飯を食べてると小笠原が俺の肩をつついた。
「…清水、今日の放課後だから。」
その人を見下したような視線が気に食わない。
「わーってるよ。」
話のコシを折られて俺は少しキツイ返事をしてしまったかもしれない。けど、他の奴は小笠原には興味は無く、話の続きをしている。
「ならいいんだ。」
小笠原がクルリと後ろを振り返り、立ち去ろうと足を動かそうとしている時、俺は思い出した。
「おい、今日の昼ってもしかして…」
確か、この間の図書整理でいらない本があったから業者に引き渡す作業があったような…
それが俺らの担当って、津田から聞いた。前見たときには、かなりの量があったような…
「大丈夫だよ。」
って事は、無かったって事なので安心して胸を撫ぜ下ろした…のもつかの間。
「俺一人でやったから。」
「えっ!」
お礼が先か、謝罪が先かで悩んでいるとアイツはサッサと立ち去ってしまった。
……可愛くねーー!!無愛想の無表情!無感情!!

 

「ごめん、ちょっと本見てきてもいい?」
カウンターで雑誌を読んでいると小笠原は思い出したように机から顔を離した。
「…いいけど俺、本の貸し出しの仕方わかんねーぜ。」
そもそも、借りる事じたいしない。
「その時は俺を呼んで。」
小笠原も暇つぶしのために本を探しに行ったのかな。アイツが座ってた場所を覗くと、今日出された数学の宿題が半分も終わっていた。
見るからにアイツは几帳面だ。そんなもん、夜中にするのが当たり前なのに。(ソレはきみだけ/作者)
待つこと数分。帰って来る気配がしない。
図書委員でもないからか、このカウンターは何故か一人ではいづらい。
しかも司書さんは今日はお休みだし。
「…お〜い、小笠原〜」
館内は勉強している生徒もいるし、大声厳禁なので小声で名前を呼ぶ。ちょっとの音でも立てたら皆こっちを見るもんだから神経が減るよ。
本棚の海を一つ一つ覗き見ると、奥の方に小さく、小笠原の姿があった。
制服をきちんと着こなし、人を寄せ付けないオーラ。だが、今の小笠原にはそんなものは無かった。
一生懸命、背を伸ばし、同じように手も伸ばす。
あと少しの所で本に手が届かないようだ。その姿が、飼い犬がお菓子を取ろうと必死にチョウダイする姿を重なってしまい、思わず笑みが零れた。
「ほら。」
気づかれないように忍び足で近づき、目当ての本を取ってあげる。
小笠原は一瞬驚いて体勢を後方に崩してしまったが、真後ろに俺がいたので扱けずにすんだ。
「あ、ありがと…」
本棚と俺に挟まれて身動きが取れないらしく、俺を無視しようとはしない。
ん?顔が少し赤く見えるのは、夕日を背にしているからか?
この時、小笠原の香りがどこかでかいだ事のあるものだったが、思い出せずにいた。
メガネをかけ直して本を抱きしめてる小笠原は、いつもの鋭利な雰囲気とは別人だった。
「何の本?」
俺は何だか面白くて、両手で小笠原の逃げ道を無くしてみた。
「今度、映画になるヤツの原作の物語…」
視線は合わせてはくれないが、どこか幼く見える。
「へぇ、お前ってこんなファンタジーが好きなんだ。」
「津田に借りてきてって頼まれた本。今日行くけど、行く?」
「え!マジで!?」
一週間ぶりの津田との再会である。ああ!!めっちゃ嬉しい!
「行く!行く!!」
俺は相手がアノ小笠原だと言うことも忘れ、手を握ってしまった。
「……本当に津田のこと……」
「え?」
「ううん、何でもない。」
俺は小笠原の心情は露知らず、いつもより当番が終わるのを楽しみに待ったのだった。

 

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