神様がいないとしても…5

 

 

 

 

 

 

 

「来週までには探しておけよ…」
「っん…わかって…ます…」
「俺がしてやれるのは…あそこまでだからな。」
「もっ…早く……和十さん…」
「本当は、誰にもお前を渡したくない…!」

 

 

 

津田の退院の日が近づいてきた。
津田が入院して数週間。
そのおかげ…っと言ったら悪いけど、俺は小笠原と仲良くなり、そして恋をした。
寝ても覚めても、ずっと小笠原の事を考えている。
好きな人が傍にいるってだけで、気持ちが晴れになる。


「はぁ〜。すっかり寒くなったな。ほら、息が真っ白。」
「この分じゃ、雪が降るのも時間の問題…かな。」
紺色の温そうな手袋をした手を口元まで持っていき、小笠原は一息はいた。
それがあまりにもこの季節と同化していて、見とれずにはいられない。
「今日はいいの?津田のお見舞い。もうすぐ退院なんでしょ。」
――…そういや、最近行ってない。
小笠原といる事の方が楽しくて、そっちにばかり心が向いていた。
俺が行かなくたって、クラスの奴らが見舞いに行ってるらしいからな。
「あー、最初の方結構行ったし、それに退院も近いし、いいかなって。
それに行き過ぎても、うっとおしいって思うだけだろうし。」
少し、言い訳じみてるって、自分でもわかってる。
「んー。そんなことないと思うけどなぁ。」
小笠原は少し困ったみたいな笑みを浮かべた。それは何故か俺を不安にさせるのには十分だった。
今にも消えてしまいそうな小さな手を、俺は握り締めた。
「…どうしたの、清水…」
突然、手を握られたにも関わらず、小笠原は平然としている。
握った手は思った通りに小さくて、むやみに力をいれられない。
「…いや、何でもない…」
「変な清水だね。何か思い出して、心細くなったりでもしたのかな。」
「そんな…」
「そういう時って、人肌が恋しくなるもんだろ。いいよ。今だけ、手をつないでいてあげる。」
小笠原は小さな力で俺の手を握り返してくれた。
何で…そんなに優しいんだよ。
「そうでなくても、今の季節は人肌が欲しくなるもんだしね。」
「うん…」
空気が冷たくて体が冷え込むけど、それが苦にならない。
その理由はきっと……

 

 

「なぁ小笠原。」
「ん、なぁに?」
「俺さ、お前が源先生と昼休みに会ってるのを偶然見てしまったんだけど、何してんの?」
「……」
一瞬、顔の表情がぎこちなかったのを、俺は見逃さなかった。
でもそれは本当に一瞬だけで、小笠原はすぐにいつものペースを取り戻した。
それが心にひっかかる。
「別に、たいした事してないよ。ただ、少しだけ話し相手してるだけ。」
「へぇー。」
俺は小笠原に歩調を合わし、鞄を背負いなおした。
コートを着てるせいか、さっきから鞄がずれてきては持ちづらくなってくる。
さっきから何度、持ち直してるんだろう。
小笠原は手をつないでいる反対の手で髪をかきあげ、俺の目を見た。
「これね、内緒なんだけど、俺って源先生と恋人なんだ。」
「えっ!!」
「すっごい関係…」
「―――!!」
し…信じられない…。頭を石で殴られたみたいで痛い。
「なんてね。本当はただの従兄弟。あ、これ皆には内緒だよ。」
可愛らしく人差し指を口元で立て、首をかしげた。
どうやら冗談だったらしく、俺は気づかれないように胸を撫ぜ下ろした。
女とは寝た事はあるけど、男とはまだない。
…いや、アレは数にいれないとして。
もし寝るなら、俺は真っ先に小笠原とするだろう。
「お前って、冗談も言う奴だったんだな。知らなかった。」
本当、まだ知らないお前がいっぱいいるんだろうな。
「ふふ。」
…また香る小笠原の匂い。
…どこかでかいだ事のある香りなのに、いまだに思い出せずにいた…。

 

 

 

 

 

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