雨の街
僕が中二の時、不思議な体験をした。多分六月だったと思う。
雨がよく降る日が何日おも続いた記憶があるから。
その日は朝から雨の降る日だった。
何か理由があってなのか、それとも突拍子に思いだって来たのか、気がつけば公園にいた。
人一人さえいない、独りぼっちの公園。
桜はもうせでに咲き終わり、その下には色とりどりの紫陽花がひっそりと雨に打たれていた。
傘には水滴が規則的に跳ねる様に落ちてきては地面へと落下していく。
まるで、雨の音楽。それの繰り返し。
砂場には幼い子が遊んでいた形跡が残る玩具のバケツとスコップ。その演出だけでも淋しさを感じる。
僕にもこんな時代があったなぁと、感傷にひたりながら、桜の木の下を通りすぎた。
そして、何もすることがないので、家に帰ろうと公園を出た。来るときはどうだか覚えてはいないけど、
帰り路では誰とも会わない。雨だから外に出たくないだけなんだろうか。僕は、雨が嫌いじゃない。
むしろ、好きな方に入るくらいだ。でも、何日も雨が降り続くと少し嫌気がさす時もあるけどね。
家まであと少しの曲がり角を曲がった。それと同時に僕と背格好が似た子もこっちに曲がり、ぶつかってしまった。
「すいません。」
ぶつかってしまった子に謝り、立ち去ろうとした。なのに、足が前に進まない。
その原因は…
「―何でいるの?」
腕を掴まれていたからだ。
「何でって、初対面の人間にそんな事を言われなきゃいけないんだ。」
どうやら少年のようで、傘は差さず、青いレインコートを着て、輝くように黒い髪をしていた。
「あの、そろそろ放してほしいんだけど。
「照に知らせなきゃ…。」
僕の話を無視し、なにかを心配している。
「キミ、一緒に来てもらうよ。」
それだけを僕の耳に残し、グイグイと腕を引っ張って僕が来た道を歩く。…僕にしては来た道を戻っている事になる。
「照ー、大変だよ。」
公園に着くなり、少年は照と言う名の少年の名前をよんだ。
照と呼ばれた少年はこの少年とは対照的に、白いレインコートを着ていて、月のような銀色の髪をしていた。
「彩、遅いぞ。何やってんだ。」
彩、つまり僕をここまでひっぱって来た少年に一括して怒鳴ると、僕に気がついた。
すぐに僕を凝視し、改めて彼は驚いたのだ。
「どうして人間が?」
「そう。こっちに来る時に偶然つかまえたんだ。きっと彼も無意識的に足を運び入れてしまったんだよ。」
「…そうだよな。来たくても来れない場所だもんな。」
一体、彼らは何を話しているんだろう。そんなことより、早く家に帰りたい。
「ねぇ。手を離してほしいんだけど。」
「あ、ごめん。」
彩はパッと僕の腕から手を解いた。
「へぇ〜俺らはアッチのモノに触れるんだ。なぁお前、名前はなんて言うんだ?」
「水沢。水沢蛍。」
「綺麗な名前だな。俺は照。こっちは俺の相棒の彩。可愛い顔してるだろ?」
確かに。男の目から見ても母性本能を擽るような顔立ち。それに比べ、照の方は彫刻の様にホリが深く、
人形の雰囲気だと表現した方が近いだろう。
そして、二人に共通する点は二つある。一つ目は繊細な美貌の持ち主。二つ目は、雨がとてもよく似合う。
波長が一致しているかのように、雨にとけこんでいた。
「蛍、ココにいて、何も感じない?」
「感じるって、何をだよ。いつもと何も変わりはないよ。」
変なやつ。
「じゃあ、俺に触ってみて。何か変わるかもしれない。」
スッと照は腕をこちらへ差し出した。白いレインコートには相変わらず雨が降り落ちては弾ける。
不規則なくせして、規則正しい音色。
彼らのやる行動は僕には理解できやしない。当たり前にソノ手に触ろうとした…。
「!?」
あまりにも衝撃的な事が起こり、言葉が出てこない。だって、照の体を通り抜けてしまったんだから。