誘惑のエスコート4
友行の教え子、酒井憲太とその友達、伊原慎也が通う稲津高校。
この高校は憲太の家から自転車で10分と近く、朝が苦手な憲太には何かと都合がいい。
少し郊外に建てられているせいか、昼間でも辺りは静かである。
聞こえるのは、風が靡く音にまじる生徒達のざわめきだけ。「おい慎也。お前、友行さんのお友達にチョッカイ出したらダメじゃん。」
慎也は一瞬、大きく目を見開いて頬を丸く膨らませている憲太を見たが、すぐにその目を細めた。
「…気づいたんだ?」
「気づくっちゅ〜に。」
悪びれもしない瞳は自信の表れからか。
いつもはお子様思考なくせに、変に鋭い…慎也はたまにそう憲太を評価する事がある。
憲太と慎也は高一からの付き合いで、お互いを知ってまだ一年半程度。
短くて長いような期間に慎也という人物は子供どころか、大人の扱いにも慣れていると気づいたのはつい最近のこと。
そして慎也がバイである事を知ったのも、記憶に新しい。
慎也としてはバラしたつもりはなかったのに、何故か見抜かれていた。
『お前って、どっちでもいけるんだ。』好奇心の目で見られない。
好奇心でアレコレ聞かれない。
同類ならばニオイでわかると言うことはあるが、憲太はノーマルである。
同じ学年に可愛い彼女だっている。
なるべく自分とは違うタイプの男の子とは接触しようとしてこなかった慎也だ。
そもそも、その相手を好きになったら困るだけであるのは知っていたから。
だけど憲太とはずっと一緒にいたいと思っている。
友達、恋人、としてではなく、親友として。「憲ちゃんの第六感は動物並だなー。でもよ、俺、あんなモロ好みの人見たことないよ。
あー、でも憲ちゃんが俺より背が高くて、もうちょっとシャープな眼差しで優しいエロボイスだったら、タイプなんだけど。」
「そんなん、俺じゃねーじゃんか。」
「だ〜か〜ら、憲ちゃんは憲ちゃんのままでいいんだよ。」
たまに年相応に笑う慎也は、まだまだ子供に見える。
向かい側に座る憲太の額をかるく突付き、慎也はまた笑った。
「そんな事より、ちょっかい出しちゃダメ!!」
「いくら憲ちゃんでも、その要求は飲めない。人の恋愛は自由だし、俺は気持ちを押さえようなんて思わない。」
コレだけは譲れない…と言う意思を目の当たりにし、少しおじげづいてしまう。
コレ以上、何言っても無駄なのは確かである。
「ん〜だよなぁ〜。あ、そうそう。前から聞きたかったんだけど、お前って男役?女役?」
「タチよりのリバ。基本はタチだけど、ネコも好き。健太さんと寝れるなら毎晩ネコになっちゃうよ。
そしていっぱい、気持ち良くしてあげるのになぁ。」
「ばかっ!そんなの大声で言うなよ!」
言った張本人は平気な顔してるのに、憲太のこの照れようと言っては…。
本当に、まだまだお子様だと慎也は思った。
17歳ときたら思春期真っ盛りで、男なんて猥談に花を咲かせて楽しんでいる。
憲太もそういう話には一応、ついてきてはいるが自分から話そうとかは思わない。
だけど先にこの話題を振ったのは憲太である。
なのに顔はリンゴのように真っ赤か。
そういう所が前々から可愛いと慎也は思っているのだ。
「憲ちゃんも男と寝てみたらいいんだよ。あの気持ちよさ…女の子じゃ味わえないのがあるよ。
なんならいい人、紹介しようか?」
冗談とも本気とも言える口調で慎也は提案をしてみる。
「いらない!このエロばか!!」
「はいはい。エロで馬鹿ですいません〜。」
慎也は予想通りの反応をする憲太に満足をし、足を組みなおした。
「で、でも…健太さんって…恋人、いそうだよな。」
少しいい憎そうに首をかしげる。
「ヨコレンポ…って有りだろ?俺の方が若いし、テクは若さでカバー。なんつって!」
…それ、冗談じゃないだろ…
憲太は思うだけにして口には出さない。
「…アホらし。」
憲太は呆れたようにソッポを向いた。
もしかしたら慎也を友行さんに会わせてしまったのは間違いだったかもしんない。一人悩み中の憲太をおかまいなしに慎也は、憲太の背中に抱きついた。
そして得意げに笑ってVサイン。
「そんな俺はまた健太さんに勉強を見てもらっちゃう約束をしちゃったv」
「…最近の子は…積極的で手が早い…」
「お前も最近の子。また電話で報告するな!」
「まぁせいぜい、頑張って下さい。」
憲太の心は少し、複雑になってしまったのは言うまでもない。