魅惑のエスコート 3


高永さんの第一印象は‘純粋’であった。
男と付き合った事のない彼は、顔を真っ赤にして俺に告白をしてきた。
俺は年上と付き合う気は無かったのだが、なりゆきでOKせざる負えなくなってしまった。
しょうがなくOKを出すと、高永さんは向日葵のように笑った。
いつかは、この笑顔を振るのかと考えたら少し可哀想な気もする。
でも、何回も言うように俺は年上は好みじゃない。
甘えたいよりも、甘えられたい派なのだ。年上なんていったら、俺が甘えるみたいで嫌。
それに惚れてるより、惚れられてる方がこっちにしては都合がいい。
今までの経験からすると、相手はこっちの言いなりになりやすいのだ。
高永さんもどうせ、そうなんだろ?

「へぇ〜部屋、キレイにしてるんだね。」
高永さんの第二印象は‘純粋に子供’。先ほどから俺の部屋を360度、床から天井まで嬉しそうに観察している。
初めてのモノには興味を丸出しにし、落ち着くまで好奇心を剥き出しにする。
この行動は、小学生のイトコを思い出させる。
「適当に座ってて。飲み物持って来るから。」
3LDKのマンションに快適な一人暮らし。親から仕送りが毎月講座に振り込まれるから、金には困らない。
バイトだって、滅多にしない。遊び金だって送られてくらから、バイトをする必要がないのだ。
親が言うには‘学生のうちは遊びまくれ’。俺はお言葉に甘えて、遊びまくっている。
この前買ったソーダ―水が冷蔵庫にあったはずだ。
ソレを二本、俺と高永さんの分を持って、自室の戸をあけた。
「おまたせ。」
「ありがとう。わっ、すごい冷えてるね!冷たい!」
「足、くずせば?ココ、俺しか住んでないし。」
緊張してるのか、正座を組んで背筋をピンッと吊り上げられたかのようにして座っていた。
それを横目で見ながら、俺も座った。
「一人暮らしなんだね。ココって結構良いとこなんじゃない?家賃とか、大丈夫なの?」
冷えたソーダ―を軽く飲んで喉を潤し、高永さんは俺を見た。
黒くて、大きな瞳に俺が写る。
「…うん。俺んち、親がデッカイ会社のシャチョーしててさ。家賃から光熱費、ついでに遊び金まで仕送りしてくれてるんですよ。」
「えーいいなぁ。俺なんて学費だけ親に出してもらって、寮も生活費も全部自腹だよっ!」
彼はいわゆる勤労学生という奴なのだ。
少しづつ、こうしてお互いの事を知り合って行くのだろうか…。
悪いが俺には想像しづらい。
別に話す事なんてないから、当初の予定、レポートの最終確認を行うためにカバンから用紙を取り出した。
ソレを机の上に広げる。今回は別段と難しくはなかったので、本当は最終チェックなんて必要なかった。
「俺もなんかやろっと。」
この人を、どう誘い込むかだ。
この家に誘われた時点でもう期待はしているだろう。顔には出てないが頭ではわかってるはず。
クーラーが効きすぎて寒いのか、高永さんはカバンの中から薄手のパーカーを取り出して羽織った。
それとも、狼の危険に身を案じての自己防衛か…。
俺は一応、見直しをする形だけを繕い、頭ではこの人をどう攻めようかのシュミレーションが行われていた。
甘い言葉を囁きながら、優しく攻めようか、キスをして情熱的に攻めてみようか。
一体、この手で何人の人と関係を持っただろうか…。
少々自分に呆れながらも、実践に移ることにした。

「高永さんは、何やってるの?」
少し相手の様子を探るために体をギリギリまで近づけてみた。
これをされると、大概の人は緊張して軽いパニックを起こす。男でも女でも、関係なく。
付き合い始めてまだ三日経つが、セックスどころかキスさえまだしていない。
リードする、とまで宣言したから、お手並み拝見と思いされるのを待っていたのに全然しない。
しないどころか、彼はされることもなく平然としているのだ。
「カテキョのバイトしてるから、その予習。結構高度な質問してくるから…」
シャーペンが走る紙の上には、キレイな英文が出来上がっていく。
「あれ?高永さんって理工学科じゃ…」
「一応、在籍はね。でも俺、英語も好きなんだ。専門は科学なんだけど、数学全般、化学生物とかもいける。」
手をとめて、得意気な顔をして俺を見た。
今がチャンスと思ったのは俺だけだろうか?
彼に覆い被さるように、強引で不意打ちのキス。
「…んっ」
意外にも可愛い声をあげ、高永さんは目を閉じた。
「ねぇ…いいでしょ…?」
優しく耳元で囁き、高永さんのシャツな中に手を滑り込ませる。
触れた肌がクーラーでヒンヤリしているが、スベスベで俺の手に吸い付いてくるよう。
床にゆっくり押し倒そうと体勢を変えた。
その時…
「ダメ!!」
急にお預けを食らうはめになってしまった。
「…え?」
あっけにとられて俺は、そのままで手をとめてしまい、おあずけを食らわした張本人をマジマジと見てしまった。
「健太くんはレポートの見直しするんだろ。最優先はそっち。やる事をやってから他の事をしなさい!
それに俺はカテキョの予習中。そんなヨコシマな考えは捨てなさい。」
…ああこの人、怒った顔も可愛いんだ…
「…え?セックス目当てで俺んち来たんじゃ…」
「僕ってそんなに尻軽に見える?」
呆然とする俺を無視して、彼は一人机に向かいなおした。
誘ったのに、断られた…こんなのって初めて……

 

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