魅惑のエスコート 7


次の日から高永さんは姿を見せなくなった。
授業以外の時間で、ヒマを見付けると俺の近くにいつもいたあの人が、いきなり俺の前から姿を消した。
大学には出てきてるみたいだけど、顔はおろか、姿さえ見ていない。
別にどうでもいい時は会えてたのに、会いたい時に会えないなんて…
大学ってこんなに広かったんだ。

「ねぇ速見君。」
午後の授業も身に入らないまま終わり、ボーっとしていると同期の仲間、白井雪美が声をかけて来た。
一瞬、高永さんかと思い、ドキッっと勢いよく振り返ってしまった自分が恥ずかしい。
「…なんだ。雪美か。」
露出の高い胸がはだけた服を身に纏い、男を誘惑するかのような紅いリップ。
「そんなにがっかりしないでよ。」
「で、何。」
「あたし今日、安全日なんだ。あたしとするのってご無沙汰でしょ?」
雪美とか何回か寝たことがあるけど、愛情なんて共有しない体だけの関係だった。
お互い決まった相手もいなく、ただの性欲処理としての付き合いではあるが、コレはコレで後腐れなくていいんだけど。
「…いいよ。どこでする?」
座ってた席を立ち、雪美の腰を引き寄せて唇を奪った。
雪美はウットリとした顔をし、慣れた目つきで俺を誘う。
「速見くんちがいいな。」

 

 

「ねぇ久し振りのあたし、どうだった?」
セックスの後、一服の煙草をベッドの中で吸ってると雪美がそんな事を聞いてきた。
「…どうって、いつもと同じだったけど。」
「じゃあ、気持ちよかった?」
「んーまぁな。」
気乗りしない返事だ。
正直、あまり燃え上がらなかった。愉しんではいたのだけれど、イマイチだった。
行為の最中、頭の中をチラつくのは何故か高永さんの顔。
この人を、どうやったら抱く事ができるのだろうか。無理強はさせたくない。
感じさせて、泣かせて、キスをしてやりたい。
雪美を抱いてる途中、思わず考えていたらイってしまった。
運良く、ちょうどいれている最中だったので何とかごまかせたものの…。
もしかしたら小声で「高永さん…」と言ってしまったかもしれない!
でも終わった後、雪美は何も言ってこないからソレはなかったのだろう。いや、黙ってるだけか?
「ほら、送って行ってやるから服着ろよ。」
「ハーイ。車がいいな。」
「はいはい。」
俺もこいつを送るために服を着始めた。
「速見君って変わったよね。」
「…え?そう?」
「うん。昔と違うわよ。なんていうの?遊び人じゃなくなってきてるみたい。」
「俺ってそんなに遊び人?」
そんなの、言われなくても自覚してるだろ。
「遊び人よ。恋人がいてもお構いなしだったじゃない。でも、そんな性格だからイイオトモダチ関係が続いたりしてんのよ。
セフレ、結構いるでしょ・?」
雪美は‘シャワー借りるね’とベッドを飛び出した。
俺って…変わったかな。

 

この一週間、高永さんは顔を見せなかった。故意に避けてるとしか思えない。
避け出したのはあの男、翔一の出現から。
翔一は高永さんの異母兄弟にあたる男で、母親が違うせいか雰囲気さえ違う。
翔一は、高永さんに執着していて独占欲が大きいのは確かだ。
無意識のうちに、俺は高永さんを探すようになってしまった。
理工学科の校舎まで赴いたり。寮まで足を運んだり。
でも、彼はいなかった。
とにかく俺は、高永さんに会いたくてしょうがない。
今日も会えないまま一日が過ぎ、少し重い足取りで家へ帰って行った。
どうして携帯電話はおろか、家の電話番号を聞いておかなかったのか。
今更ながら自分を責めてしまう。
「おいお前。」
夕暮れの中、不意に呼ばれ反射的に立ち止まり顔を上げる。
前方を見ると、距離をおいて立っていたのは翔一だった―――。

 

 

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